第11世代Core iプロセッサー(Tiger Lake)を搭載したIntel NUCがまもなく発売されます。
単なるCPUのアップグレードではなく大幅に機能が向上した製品も発表されました。
<目次>
NUCとは約12cm角の小さな箱の形をしたデスクトップパソコンです。
一般的なデスクトップパソコンより小さく、放熱性能が低いため、内部はノートパソコンや2in1パソコンと同じ構成となっています。
第10世代Core iプロセッサーを搭載したNUC10シリーズでは、発熱の少ない10nmルールで製造されたIce Lakeが搭載されることを期待しました。しかし発売されたNUCには従来と同様の14nmルールで製造されたComet Lakeが搭載されていました。
今回発表となったNUC11シリーズには、待望の10nmルールで製造された第11世代Core iプロセッサーであるTiger Lakeが搭載されています。
NUC11シリーズは全部で34品種もあり、このような命名規則の型番となっています。
NUC11シリーズは大きく分けて3種類あります。一般向けのPanther Canyon、ビジネス向けのTiger Canyon、ゲーマー向けのPhantom Canyonです。
Intel NUCにはM.2 SSDに加えて2.5インチSSD/HDDを搭載できるタイプがあります。2.5インチSSD/HDD用のベイが無いタイプはその分薄いつくりとなっています。
また、天板は外してユーザーが拡張機器を設計できるようになっていますが、NUC11シリーズではワイヤレス充電器が搭載されたモデルが用意されました。
NUC11シリーズではビジネス向けも用意されたためCPUは一般向けとvPro対応のものがあります。
NUC11シリーズにはその他にもメモリーとSSDだけが搭載されていてOSがインストールされていないモデルや、有線LANが2ポート搭載されたモデルもあります。Phantom CanyonではOSがインストールされているかどうかで型番が変わります。
以下、NUC11シリーズの詳細について説明しますが、サイトと製品概要ドキュメントなどとで情報に食い違いがあります。そのため、これまで公開されてきた資料などから正しいと思われる情報を記載しますのでサイト情報と違う場合があります。
3つのNUC11シリーズでCPUとメモリーだけは共通です。
CPUは第11世代Core iプロセッサーであるTiger Lakeです。
この表にあるように現時点でTiger Lakeは最高でも4コアまでです。10nmルールで製造されていますので6コアなども可能なはずですが4コアまでです。
NUC11シリーズに搭載されているのは次の5種類のTiger Lakeです。
どのCPUにもIPU(Image Processing Unit)が搭載されているバージョンとされていないバージョンがありますが、どちらかは不明です。
利用できるメモリーは1.2V DDR4-3200のSO-DIMMで、Dual Channelの64GBまで実装可能です。
CPUの仕様ではLPDDR4x-4267が使用可能となっているので使えるのかもしれませんが、NUCの仕様ではDDR4-3200だけとなっています。
これまでのNUCからの正当な後継機と呼べるもので、一般向けのためかアグレッシブな変更はありません。
公開されている機種は以下の通りですが、すべてが発売されるのかは分かりません。
GPUはXeはIntel Iris Xe Graphics、UHDはIntel UHD Graphicsです。
型名 | プリ インストール |
CPU | GPU | 2.5インチ ベイ |
ワイヤレス 充電器 |
---|---|---|---|---|---|
NUC11PAQi7 | Windows 10 Home DDR4 16GB NVMe 500GB |
Core i7 | Xe | ○ | ○ |
NUC11PAQi7 | - | Core i7 | Xe | ○ | ○ |
NUC11PAHi7 | - | Core i7 | Xe | ○ | - |
NUC11PAKi7 | - | Core i7 | Xe | - | - |
NUC11PAQi5 | Windows 10 Home DDR4 8GB NVMe 500GB |
Core i5 | Xe | ○ | ○ |
NUC11PAQi5 | - | Core i5 | Xe | ○ | ○ |
NUC11PAHi5 | - | Core i5 | Xe | ○ | - |
NUC11PAKi5 | - | Core i5 | Xe | - | - |
NUC11PAQi3 | Windows 10 Home DDR4 8GB NVMe 500GB |
Core i3 | UHD | ○ | ○ |
NUC11PAQi3 | - | Core i3 | UHD | ○ | ○ |
NUC11PAHi3 | - | Core i3 | UHD | ○ | - |
NUC11PAKi3 | - | Core i3 | UHD | - | - |
外観で分かる違いはMini DisplayPortが追加されている点です。
従来の機種ではThunderbolt 3(USB Type-C)からHDMIなどに変換しないと2台以上のディスプレイを接続できませんでしたが、Panther Canyonではディスプレイ2台までは簡単に拡張できます。
こちらに先行レビューが掲載されています。ただし、ゲームマシンでもないのにグラフィック性能ばかり重視したレビューとなっており、Tiger Lakeで搭載された新しいCPUコアの性能はよくわからないものとなっています。
概要はこちらで確認できます。
技術仕様書はこちらからダウンロードできます。
CPUはCore i3/5/7の通常タイプでvPro対応のものは使われていません。
GPUはCore i5/7ではIntel Iris Xe Graphicsが搭載されています。実行ユニットはCore i7が96、Core i5が80です。
Core i3だけはIntel UHD Graphicsが搭載されています。Intel Iris Xe Graphicsに比べて極端に性能が低下しますので購入する場合は注意が必要です。実行ユニットは48です。
ディスプレイ出力はHDMI 2.0b、DisplayPort 1.4、HDMI経由の最大解像度は4096x2304 @ 60Hz、DisplayPort経由の最大解像度は7680x4320 @ 60Hzです。
ディスプレイ出力はHDMI、Mini DisplayPort、前面と背面のUSB Type-Cを使うことで2K解像度なら4台までのディスプレイを接続できます。
Intel Iris Xe GraphicsはDirect X 12.1、OpenGL 4.5、OpenCL 2.1対応です。Intel UHD GraphicsはDirect X 12.1、OpenGL 4.5、OpenCL 2.0対応です。
M.2 NVMe SSDがすべてのモデルで搭載可能で、PCIe x4はGen 4です。
2.5インチベイ搭載モデルではSATAタイプの7mm厚までの2.5インチSSD/HDDが搭載可能です。
前面と背面にUSB Type-Cは各1ポートがあり、両方ともThunderbolt 3に対応しています。また、USB 3.2 Gen 2(10Gbps)対応です。
従来製品では前面USBはThunderbolt 3に対応していませんでした。
前面に1ポート、背面に2ポートのUSB Type-Aがあり、USB 3.2 Gen 2です。
i225Vが使用されており、10/100/1000/2500Mb/sに対応しています。
Wi-Fi 6(802.11ax)、Bluetooth 5.0に対応しています。
一部のモデルは天板がワイヤレス充電器に置き換えられています。5W/7.5W/15Wに対応しています。
Core i3/5/7それぞれにWindows 10 Homeがプリインストールされた完成品パソコンもあります。
Core i7モデルは16GB、Core i3/5モデルは8GBのメモリーと、500GBのNVMe SSDが搭載されています。
天板はワイヤレス充電器になっています。
このシリーズはTiger Lakeに搭載された機能を積極的に使っており、相当アグレッシブなモデルなのですが、ビジネス用途ということで少し不安もあります。
現時点でCore i3モデルの販売が始まったのですが、化粧箱ではなくダンボール箱のまま販売されています。
通常Intel NUCは、手に取って外観写真やスペックを見てもらうように、カラー印刷された化粧箱で販売されています。しかしダンボール箱で売るということは、単体で売るための見栄えを排した梱包目的ですので、企業向けに大量に販売するような製品であるということです。
今回販売されたものも通常の仕入れルートとは違う可能性があり、一般ユーザーが安定して入手できる可能性は低いかもしれません。またサポート面でも不安が残ります。
そうは言っても2年以上使うことを考えるなら、USB 4.0を使えるメリットはあるかもしれません。
公開されている機種は以下の通りですが、すべてが発売されるのかは分かりません。
GPUはXeはIntel Iris Xe Graphics、UHDはIntel UHD Graphicsです。
NUC11TNHi70Q、NUC11TNHi50W、NUC11TNHi30Pという製品は中国向けのようなので省略します。
型名 | プリ インストール |
CPU | GPU | 2.5インチ ベイ |
Dual LAN |
---|---|---|---|---|---|
NUC11TNKv7 | Windows 10 Pro DDR4 16GB NVMe 500GB |
Core i7 vPro |
Xe | - | - |
NUC11TNHv7 | - | Core i7 vPro |
Xe | ○ | - |
NUC11TNHv70L | - | Core i7 vPro |
Xe | ○ | ○ |
NUC11TNKv7 | - | Core i7 vPro |
Xe | - | - |
NUC11TNHi7 | - | Core i7 | Xe | ○ | - |
NUC11TNHi70L | - | Core i7 | Xe | ○ | ○ |
NUC11TNKi7 | - | Core i7 | Xe | - | - |
NUC11TNKv5 | Windows 10 Pro DDR4 8GB NVMe 500GB |
Core i5 vPro |
Xe | - | - |
NUC11TNHv5 | - | Core i5 vPro |
Xe | ○ | - |
NUC11TNHv50L | - | Core i5 vPro |
Xe | ○ | ○ |
NUC11TNKv5 | - | Core i5 vPro |
Xe | - | - |
NUC11TNHi5 | - | Core i5 | Xe | ○ | - |
NUC11TNHi50L | - | Core i5 | Xe | ○ | ○ |
NUC11TNKi5 | - | Core i5 | Xe | - | - |
NUC11TNHi3 | - | Core i3 | UHD | ○ | - |
NUC11TNHi30L | - | Core i3 | UHD | ○ | ○ |
NUC11TNKi3 | - | Core i3 | UHD | - | - |
概要はこちらで確認できます。
技術仕様書はこちらからダウンロードできます。
CPUはCore i3/5/7の3タイプに加えてビジネス用途のためvPro対応のものもあります。
GPUはCore i5/7ではIntel Iris Xe Graphicsが搭載されています。実行ユニットはCore i7が96、Core i5が80です。vPro対応CPUとの違いはありません。
Core i3だけはIntel UHD Graphicsが搭載されています。Intel Iris Xe Graphicsに比べて極端に性能が劣りますので注意が必要です。実行ユニットは48です。
ディスプレイ出力はHDMI 2.0b、DisplayPort 1.4a、HDMI経由の最大解像度は4096x2304 @ 60Hz、DisplayPort経由の最大解像度は7680x4320 @ 60Hzです。
ディスプレイ出力はHDMIの2ポート、USB Type-Cの2ポートを使うことで2K解像度なら4台までのディスプレイを接続できます。
Intel Iris Xe GraphicsはDirect X 12.1、OpenGL 4.5、OpenCL 2.1対応です。Intel UHD GraphicsはDirect X 12.1、OpenGL 4.5、OpenCL 2.0対応です。
M.2 NVMe SSDがすべてのモデルで搭載可能で、PCIe x4はGen 4です。
2.5インチベイ搭載モデルではSATAタイプの7mm厚までの2.5インチSSD/HDDが搭載可能です。
背面にUSB Type-Cは2ポートがあり、両方ともThunderbolt 3とUSB 4.0に対応しています。
前面に2ポート、背面に2ポートのUSB Type-Aがあり、背面の1ポートはUSB 2.0ですがそれ以外の3ポートはUSB 3.2 Gen 2です。
Dual LANタイプのLANコネクターの両側にあるUSB Type-AはUSB 2.0です。
i225-LMが使用されており、10/100/1000/2500Mb/sに対応しています。
Dual LANタイプは両方とも10/100/1000/2500Mb/sに対応しています。
Wi-Fi 6(802.11ax)、Bluetooth 5.0に対応しています。
vPro対応のCore i5/7それぞれにWindows 10 Proがプリインストールされた完成品パソコンもあります。
Core i7モデルは16GB、Core i3/5モデルは8GBのメモリーと、500GBのNVMe SSDが搭載されています。
vProに対応していないCore i3/5/7にも完成品パソコンはありますが、Windows 10はプリインストールされていません。中国用の電源ケーブルが付いていることからWindows 10を使えない中国向けの製品と思われます。
ゲーマー向けNUCは、最初はAMD RADEONを搭載し、その後は大きな筐体にして一般的なビデオカードを搭載できるようにしていました。
今回は最初と同じ大きさの筐体ですが、GPUがAMD RADEONからNVIDIA GeForce RTX 2060に変更されています。CPU内蔵のIntel Iris Xe Graphicsも高性能なため高いパフォーマンスが期待できます。
公開されている機種は以下の通りですが、両方とも発売されるのかは分かりません。
型名 | プリ インストール |
CPU | GPU1 | GPU2 |
---|---|---|---|---|
NUC11PHKi7CAA | Windows 10 Home DDR4 16GB Optane 32GB +500GB |
Core i7 | Intel Iris Xe |
NVIDIA GeForce RTX 2060 GDDR6 6GB |
NUC11PHKi7C | - | Core i7 | Intel Iris Xe |
NVIDIA GeForce RTX 2060 GDDR6 6GB |
概要はこちらで確認できます。
技術仕様書はこちらからダウンロードできます。
CPUはCore i7-1165G7だけでCore i5などのバリエーションはありません。
CPUはCore i7なのでIntel Iris Xe Graphicsが搭載されています。実行ユニットは96です。
さらにNVIDIA GeForce RTX 2060 6GBが搭載されています。
背面のHDMIとMini DisplayPortはNVIDIA GeForce RTX 2060に接続されています。
ディスプレイ出力はHDMI 2.0b、DisplayPort 1.4a、HDMI経由の最大解像度は4096x2304 @ 60Hz、DisplayPort経由の最大解像度は7680x4320 @ 60Hzです。
ディスプレイ出力はHDMI、Mini DisplayPort、USB Type-Cの2ポートを使うことで2K解像度なら4台までのディスプレイを接続できます。
Intel Iris Xe GraphicsはDirect X 12.1、OpenGL 4.5、OpenCL 2.1対応です。
M.2 NVMe SSDが搭載可能で、PCIe x4はGen 4です。
前面と背面にUSB Type-Cは各1ポートあり、両方ともThunderbolt 3とUSB 4.0に対応しています。
前面に2ポート、背面に4ポートのUSB Type-Aがあり、USB 3.2 Gen 2です。
i225-LMが使用されており、10/100/1000/2500Mb/sに対応しています。
Wi-Fi 6(802.11ax)、Bluetooth 5.0に対応しています。
Windows 10 Homeがプリインストールされた完成品パソコンもあります。
16GBのメモリーと、Intel Optane Memory H10(32GB+512GB)が搭載されています。
普通は使いませんが、UHD BDをパソコンで見る場合は、Intel SGXが必須です。
NUC10シリーズが発売された時に調べたところ、どのCPUもIntel SGXは未対応となっていました。ところが今見てみると対応しているとの記述があり、実機でも対応していることを確認しています。
NUC11シリーズも同様に現時点ではIntel SGXは未対応となっています。
いろいろ調べたところ、こちらの記事にあるIntelが示したTiger Lakeのブロック図にはSGXの表記があります。
したがって、NUC11シリーズでもUHD BDは見れると思われます。
待望のTiger Lake搭載のNUC11シリーズの情報が公開されました。
種類も多く意欲的な製品もありますが、ビジネス向けだと入手が難しいかもしれません。
また、10nmルールで製造しているにもかかわらず最大で4コアというのも物足りない気がします。第12世代Core iプロセッサーのAlder Lakeを待たなければならないかもしれません。