海外で既に発売になっているSurface 3のWi-Fiモデルのレビュー記事や、日本で発売される4Gモデルのレビュー記事などが出揃ったようです。
それらを読んで感じることは、どの記事でも手放しで絶賛しているわけではないこと、どうしようもないSurface 3でもこの用途なら使えるかもという希望的観測で書かれているように思えることです。
Wi-Fiモデルのレビュー記事
海外で既に発売されているWi-Fiモデルのレビュー記事です。
- 徹底レビュー:「Surface 3」、誰もが購入を検討する“圧倒的な正しさ”とは(TechTarget Japan)
いろいろベンチマーク結果を掲載しています。比較対象の詳細スペックを掲載していないので単純比較してよいのかという問題もありますが、Surface Pro 3(Core i)やMacBook 12インチ(Core M)との比較で傾向がつかめるでしょう。グラフィック性能は向上しているが、Google Chrome、Excel、動画画像編集などには向かないと記しています。そして、
こうした長所を考えれば、Atomプロセッサの限界については大目に見られる。
と記しています。
こちらの記事も海外モデルのものです。
Surface 3の外観や付属品などのレポートに近いですが、いくつか気になる記述を引用すると、
ストレージには…、eMMC 4.5に対応したフラッシュメモリで、スペック上はリード150MB/sec、ライト50MB/secという仕様になっている。64GBモデルがeMMC 5.0対応でリード240MB/sec、ライト60MB/secなのでそれより若干遅いが、その分容量が大きい。
Windowsの起動(電源スイッチオンからログイン画面まで)が20秒、ExcelやWordの起動が2秒といったところで、正直Coreプロセッサを搭載したPCとさほど変わらない起動時間だった。
AtomのCPU性能は、前世代になるBay Trailで大幅に向上しており、現世代のCherry Trailでもそれは引き継がれている。…もちろんCoreプロセッサには及ばないが、ブラウザやOfficeアプリケーションが必要とするような性能は十分満たしている。実際筆者もこのSurface 3で原稿を書いたり、Excelで表を作ったりしてみたが、特に不満を感じることなく作業することができた。
とのことです。筆者が強調したいのは、
SoCがAtomであることをネガティブに感じている人が少なくなく、筆者のSNSのタイムラインでもそういうことを言ってる人が少なからずいた。しかし、筆者が強調したいのは、もうその常識はもう古いということだ。
Atom x7-Z8700はWindows PCとして実用的な性能を持っており、4GBのメモリと64bit版OSになったことで、Officeを使うPCとしては十分快適に利用できる
とのことです。これには私の反論がありますので、後述します。
4Gモデルのレビュー記事
早期に入手した4Gモデルのレビュー記事としてこちらがあります。
同様に気になる記述を引用すると、
しかし現在のAtomプロセッサは当時から比べると格段に進歩した。
Surface Pro 3に使われたCore i3の80%程度のパフォーマンスが出るというのが、Microsoftの主張だ。
体感速度が速い理由は「Turboモードで動く時間が長いことではないか?」と考えるようになってきた。
実際に利用を開始した後、…このとき、Surface 3に搭載されているAtom x7は通常時の最大1.6GHzでほとんど動いておらず、Turboモード時の2.4GHzに近いクロック周波数で動き続けていたからだ。
そして結論としては、
そうした心構え……すなわち、「すべてのアプリケーションは動き、応答性がよく、オフィスワークやネットへのアクセスは快適にできますよ。でも処理容量のスループットが高いわけではないですよ」ということを分かって使うぶんには、とても快適な製品だ。
Windowsそのものの応答性を優先した作り方、GPU強化、それにTurboモードの積極活用といったところが、Surface 3の使用感を高めている理由ではないかと思う。
ということだと思います。
Atom x7 Z8700のレビュー記事
Atom x7-Z8700の基本スペックはIntelのサイトにあります。
では、実際Atom x7 Z8700というCPUはどういうものなのかということに関しての回答がこちらの記事にあります。
気になる点を引用すると、
このAirmontコアは22nmプロセスルール用のSilvermontコアの微細化版で、CPUの性能自体には大きな変化はない。このため、CPU性能に関してはBay Trail世代とほぼ同じだ。
Bay TrailからCherry Trailになっての性能向上は実は結構大きいということだ。
それでもPCMark8 v2の総合スコア(グラフ1)が1.5倍になっているのは十分注目に値する。
既に述べた通り、同クロックであればBay TrailとCherry TrailのCPU性能の向上はほとんどないので、CPUクロック分とGPU、さらに言えば、Surface 3はメモリが4GBになっていることが、この結果に表れていると言っていいだろう。
ということです。
乱暴な言い方をすれば、
- CPU性能は8インチタブレットに搭載されているAtomと変わらない。
- ただし、グラフィック性能を向上させたことにより「見かけ上」で1.5倍の性能があるように見せている
ということです。
4Gモデルということの注意点
日本での発売が4GモデルのみでY!mobileから買う必要があるということでの誤認についてこちらの記事があります。
- Wi-Fiは使えない? 他社のSIMは違法? Surface 3 LTEの疑問あれこれ(PC Watch)
- 「Surface 3」日本版LTEモデルの誤解を解く――「ワイモバイルに最適化」の真意は?(ITmedia)
- SIMロックフリーな「Surface 3」が、Y!mobile“以外”のSIMカードと出会ったら……?(ITmedia)
3番目のレビューでは実際にdocomoとauのSIMを使う手順まで説明されていますが、使い物になるかは次回とのことです。
要点は、
- 一括購入ならY!mobileでもマイクロソフトストアでも通信契約無しで購入可能
- グローバルモデルであり、対応周波数と日本のキャリアが使用している周波数との対応からY!mobile以外は不利になる
- ドコモ、AUのMVNOも利用可能
ということです。それでもWi-Fiモデルより高くなり、Surface Pro 3のCore i3モデルとの差が小さくなっています。
4GモデルということでSurface 3をモバイルルーター代わりにしてのテザリングは可能です。4Gモデムの感度とWindowsプロセスの安定性次第で使いものになるかが分かれますが、この点は購入者のレポートを待つしかありません。
利用方法については、こちらに記事を参照願います。
判断基準の問題
ここからは私の意見です。
初代AtomからベアボーンやNetBook、タブレットなどでいろいろ使ってきました。それでも毎回思うのはAtomのパワー不足です。Atomが強化されてもWindowsがどんどん重くなるので、体感は変わらないのです。DELL Venue 8 Proは売却し、今は、Lenovo Miix 2 8をWindows 10評価用に使っています。
8インチタブレットで使われているAtom 3700シリーズは格段に速くなったとのことです。また、Surface 3で使われているAtom x7はAtom 3700シリーズとCPU性能としては同じとのことです。
ならば、画面操作以外の性能面でのSurface 3は8インチタブレットと違いが無いということになります。
ここで、Officeについてです。
レビュー記事の著者によってOfficeに対する感想が違います。理由はOfficeの使い方にあります。
一般的な技術者やスタッフと違い、経理部門の扱うExcelのデータは非常に重いものです。データが多いうえに計算式を埋め込むためファイルが重く、計算処理もデータが増えるにつれ重くなります。そして営業はそんなExcelからグラフを作りPowerPointにそのまま埋め込みます。
Officeと言っても業務により非常に重い処理が必要となる場合があるのです。特にSurface 3は4Gモデルということもあり個人向けとは言えターゲットはビジネスマンです。
「Officeなら十分使えます」という見解も著者の想定できる業務での感想でしかありません。同様にWebアプリにしても、メールにしても人によって扱うデータの大きさは違います。
では、どこで判断すべきかですが、
- 基本性能は8インチタブレットと同じ
- ストレージもライト50MB/sと非常に遅い
- グラフィック性能を向上させたことで店頭での体感が速いので騙されやすい
これらを考慮して、自分の使いたい用途でのデータサイズ、処理の重さから判断すべきでしょう。
まとめ
Surface 3の性能に関しては、いろいろ反論があるようで「Surface 3は使える」と言いたい人が多いようです。しかし、私としては「Surface 3は使えない」という結論です。
8インチタブレットは、データを見ることが主体の用途であり、10インチ以上のタブレットはデータの加工や作成が主な用途でしょう。持ち歩くには少し大きい、でもそれだけの画面サイズとパワーを必要とする用途向けです。
グラフィック性能を向上させることで体感速度を上げて、速くなったと勘違いさせる売り方はどうかと思います。現時点では、Surface 3を買うよりはCore i3のSurface Pro 3の方がよいでしょう。
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