Windows 10 バージョン2004が正式にリリースされましたが、どうもこれまでのバージョンと挙動が違う点があります。
その中でこれまで問題となっていた回復パーティションについて調べてみました。
Windows 10の回復パーティション
Windows 10以前のWindowsでは、Windowsを工場出荷状態に戻すためにWindowsのイメージを保存している場合もありました。そのディスク領域は通常使用するディスク領域とは別に確保されて回復パーティションと呼ばれました。
Windows 10でもメーカー製パソコンでは、そのような使われ方をしている場合もあります。しかしWindows 10というOSを初期状態に戻すだけなら、インストールされているWindows 10から必要なファイルをかき集めてインストールし直したり、クラウドからWindows 10イメージをダウンロードしてインストールし直すことができるようになりました。
そのためWindows 10では回復パーティションには、Windows 10を修復したり再インストールするための最低限の機能に限定されたWindows RE(Windows Recovery Environment)と、そのパソコン特有のドライバーだけが保存されています。
回復パーティションは少ないサイズが確保されていますが、Windows 10のバージョンが上がるごとに自動で確保されるサイズは増えています。
こちらがクリーンインストールした場合に、EFIディスクで確保される回復パーティションのサイズです。
Windows 10のバージョン | 容量 |
---|---|
1507~1703 | 450MB |
1709~1809 | 500MB |
1903~1909 | 530MB |
2004~21H1 | 550MB |
これらはWindows 10が最低限このぐらい必要だろうと確保されるサイズで、Windows 10をインストールした直後では空きサイズには余裕があります。
しかし、複合機やタブレット、スキャナーなど周辺機器をつないでいくとWindows 10に用意されていないドライバーが増えます。そのため新しいバージョンにアップデートするためにドライバーも保存すると、このサイズでは不足することがあります。その場合はこれまで使っていた回復パーティションはそのままにして、新しいサイズの回復パーティションが確保されます。
確保したサイズで足りなくなるたびに新たな回復パーティションが作成されるため、この現象は回復パーティションの増殖と呼ばれます。
Windows 10 バージョン2004での回復パーティション
Windows 10 バージョン2004の回復パーティションについてはまだ調べていませんでしたが、こちらの記事に頂いたコメントで気になることがありました。
Windows 10とLinuxとのデュアルブート環境でWindows 10 バージョン2004にアップデートしたところ立ち上がらなくなり、仕方がないのでクリーンインストールしたそうです。記事を読ませて頂いたところ、パーティションサイズが従来と違うことが分かりました。そのため今回詳しく調べてみました。
1.Windows 10 バージョン2004をクリーンインストールした場合
パソコンにはWindowsやLinuxなどのOSからの指示で、ハードウェアをコントロールする基本ソフトウェアが搭載されています。Windows 7の時代まではBIOSと呼ばれていましたが、Windows 8の頃からUEFIまたはEFIと呼ばれる新しい基本ソフトウェアに順次置き換わっていきました。
Windows 10はパソコンの基本ソフトウェアに合わせてディスクのフォーマットを決定します。
ここでは、UEFIに対応していないBIOSを搭載したパソコンの場合のディスクを「MBRディスク」と、UEFIに対応したパソコンの場合のディスクを「EFIディスク」と呼ぶこととします。
MBRディスク
Windows 10 バージョン1909をクリーンインストールした場合、MBRディスクではこのようなパーティション構成となります。
Windows 10 Pro/Home、64ビット/32ビットの組み合わせで4種類ありますが、どれも同じパーティション構成となります。
MBRディスクの場合は、OSを起動するために先頭にブート用のパーティションが必要です。パーティション 1はブート用と回復パーティションを合わせたもので、約580MBのサイズとなっています。
サイズの違いはありますが、Windows 10の最初のバージョンからバージョン1909までこのようなパーティション構成でした。
しかし、Windows 10 バージョン2004ではこのようなパーティション構成となっています。
Windows 10 Pro/Home、64ビット版/32ビット版の組み合わせで、どれも同じパーティション構成となります。
パーティション 1は50MBしかありませんが、これはブート用のパーティションだけということです。
では回復パーティションはどこにあるのかというと、Windows 10のインストールを完了させてパーティション構成を見てみるとこのようになります。
Windowsシステムパーティションを縮小することで、回復パーティションを作成していることが分かります。この場合は回復パーティションのサイズは約460MBです。
EFIディスク
Windows 10 バージョン1909をクリーンインストールした場合、EFIディスクではこのようなパーティション構成となります。
Windows 10 Pro/Home、64ビット版/32ビット版の組み合わせで4種類ありますが、64ビット版のWindows 10 Pro/Homeは同じパーティション構成となります。32ビット版は環境が作れず確認できていません。
EFIディスクの場合は、ブート用のパーティションが先頭にある必要はありません。そのためなのか分かりませんが、回復パーティションが先頭に配置されています。サイズは約530MBです。
サイズの違いはありますが、Windows 10の最初のバージョンからバージョン1909までこのようなパーティション構成でした。
しかし、Windows 10 バージョン2004ではこのようなパーティション構成となっています。
Windows 10 Pro/Home、64ビット版/32ビット版の組み合わせで4種類ありますが、64ビット版のWindows 10 Pro/Homeは同じパーティション構成となります。32ビット版は環境が作れず確認できていません。
Windows 10 バージョン2004では、この段階では回復パーティションは確保されていません。
Windows 10のインストールを完了させてパーティション構成を見てみるとこのようになります。
Windowsシステムパーティションを縮小することで、回復パーティションを作成していることが分かります。この場合は回復パーティションのサイズは約550MBです。
2.Windows 10 バージョン2004にアップデートした場合
これまで問題となっていた回復パーティションの増殖が発生するのか確認するため、EFIディスクにクリーンインストールした、64ビット版のWindows 10 Pro バージョン1909を、Windows 10 Pro バージョン2004にアップデートしてみました。
Windows 10 Pro バージョン1909の回復パーティションのサイズは約530MBで、Windows 10 Pro バージョン2004の回復パーティションのサイズは約550MBです。サイズの差が20MBしかないためか、新たな回復パーティションは作成されませんでした。
それならば回復パーティションがもっと少ないサイズからのアップデートなら、回復パーティションの増殖が発生する可能性があります。
まず、こちらで紹介したツールでディスクの最後に450MBの回復パーティションを作成してWindows 10 Pro バージョン1909をクリーンインストールしました。
インストール完了後のWindows 10 Pro バージョン1909のパーティション構成は、このようになりました。
この状態からWindows 10 バージョン2004のインストールメディアでアップデートを行ったところ、Windows 10 Pro バージョン2004のパーティション構成はこのようになりました。
後ろから2番目に約550MBの新しい回復パーティションが作成されています。
したがって、Windows 10 バージョン2004には回復パーティションの増殖の問題は残っています。
考察
Windows 10 バージョン2004での回復パーティションの確保方法の変更は、こちらの記事で説明したように、元々Microsoftが推奨しているパーティション構成になるようにインストーラーが対応したことになります。
ただし、対応したのはクリーンインストール用のインストーラーだけのようです。
アップデート用のインストーラーは必要とするサイズの回復パーティションが無ければ、新たに作成するという動作は従来のアップデート用インストーラーと変わりありません。
従来のクリーンインストール用のインストーラーは、予め確保された回復パーティションにツールをコピーするだけだったものを、アップデート用のインストーラーと同じ動作に変更したように思えます。
確かにクリーンインストールで先頭に回復パーティションが確保されなくなったことで、サイズが不足する場合に使われなくなりディスクが無駄になることはなくなります。
それでも、回復パーティションの増殖の問題は解決していないというより、できないでしょう。
回復パーティションの位置がディスクの最後に変更されたことで、回復パーティションのサイズが不足したとしても、回復パーティションの開放と再確保は可能と思われるかもしれません。
しかし、メーカー製パソコンでは今も自社ソフトウェアなども含めた工場出荷イメージを回復パーティションに保存しているメーカーもあります。アップデートで容量が不足するからと回復パーティションを開放してしまったら、パソコンを工場出荷状態に戻せなくなってしまいます。
回復パーティションを開放してよいものと、いけないものの区別をインストーラーが判断できない限り、うかつに回復パーティションを開放することはできません。無難な方法は、既存の回復パーティションはそのままにして、新たに作成することぐらいです。
まとめ
Windows 10 バージョン2004における回復パーティションの確保方法の変更は、ディスクの先頭に無駄なパーティションが残ってしまうという問題の解決にはなります。
しかし、バージョンアップのたびに必要とする回復パーティションのサイズが増えていく状況において、自動では十分なサイズを確保できない問題の解決にはなっていません。その結果、未だに回復パーティションの増殖は発生します。
現状で回復パーティションの増殖を防ぐには、これまでと同様に自分で回復パーティションのサイズを指定することが有効と考えます。
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