先日、Microsoftは米国でSurfaceシリーズの新製品としてSurface Laptopを発表しました。
学生向けの製品と言われていますが、本当の狙いは別にあるようです。
Surface Laptop
2017年5月2日にMicrosoftは以前から噂されていたSurfaceの新製品であるSurface Laptopを発表しました。
Surface Pro 4のキーボードは別売りのタイプカバー、Surface Bookのキーボードはドッキングステーションと、今までのSurfaceシリーズはWindows 8で失敗した「タブレット」という形態に固執したものでした。
しかし、Surface Laptopは単純なクラムシェルタイプのノートパソコンとなっています。
もちろん液晶画面とキーボードは分離できませんし、キーボードを裏面に畳んでタブレット形態にすることもできません。
最近はどこの企業も同じですが単発でしか売れない個人市場など相手にしていません。
長期的に安定して導入してくれて、サブスクリプション契約で継続的に利益を得られる企業や教育関係をターゲットとしています。
企業向けでは好調なMicrosoftも教育関係で安価なChrome Bookに後れを取ったことで、挽回するための先兵がSurface Laptopであるとの読みが一般的です。
Windows 10 S
Surface LaptopにはWindows 10の新たなエディションとなるWindows 10 Sが搭載されています。これはWindows 10 Educationとも異なり管理機能が強化されたものです。
Windows 10 SはWindows 10 Homeより制限が多い代わりに管理機能が強化されていてWindows 10 Proに近いものとなっています。
管理とはインストールできるアプリをWindowsストア経由のみとしています。
ここで注意すべきなのは、
- Windowsストア経由 ≠ UWPアプリのみ
ということです。
デスクトップアプリもパッケージングすることでWindowsストアアプリとなります。
デスクトップ版Officeも今後Windowsストアから提供される予定です。(すぐには分からないように既にコードネームで登録されているそうです)
そして管理機能はADより簡単な仕組みで統合管理できるようになります。
本当に学生向けなのか
しかし、幾つかの点でおかしな部分があります。
まず、価格。
$999からとのことですが、日本円に換算すれば税込み12万円程度です。趣味などの目的ではなく、あくまでも学業のためとするなら高すぎます。
日本ではSurface RTやSurface 3はそれなりに学生に売れたそうです。大学生になるとレポート作成のためにパソコンは必須なのですが、必要なのは調べ物ができてレポート作成に使えるMicrosoft Officeが入っていることです。
そのため最低限の機能で手頃なのがSurface RTやSurface 3だったということです。
Surface 3の販売が終了したことで、Surface Penを別売りとし価格を下げてSurface Pro 4のCore m3モデルをその代替えとしています。
そしてSurface Laptopに搭載されたWindows 10はWindows 10 Sという管理機能強化版です。学生個人が使うなら管理機能など不要です。
したがって、Surface Laptopのターゲットは学生ではなく教育関係機関となります。
教育関係機関が大量に導入しActive Directoryなどを使わずに簡単に管理して学生に貸与するというシナリオを狙っているのでしょう。
そしてもう一つのターゲット
教育関係機関向けにしてはおかしなこともあります。
まず、Surface Laptopのキーボードの周りは布のような素材を使い高級な質感を出しています。
学生向けには不要で価格上昇の要因にもなる仕様です。
高級感のある備品は学校の宣伝にはなりますが、短期間で陳腐化するパソコンでは効果は無く、並べて写真を撮るならどこのメーカー製なのか分からないWindowsパソコンより一目で分かるApple製品の方が効果はあります。
そしてWindows 10 Sは2017年12月31日までは無償でWindows 10 Proにアップグレードできる特典が付きます。
すなわち、Windows 10 Proにアップグレードしてしまえば、高級感のあるビジネスパソコンに変身するのです。
Surface Laptopの意味
今回、MicrosoftはSurface Laptopを使って今後のSurfaceの向かうべき方向の市場調査を行っているように感じます。
ひとつはみんなの予想通りの教育関係市場。
Windows Serverを使った包括的な管理ソリューションをMicrosoftは提供していますが、構築や運用は教育関係者だけでは行えず外部に委託することでコストが跳ね上がり導入は難しくなります。
そこでWindows 10 Sという簡易的な管理機能を搭載した専用Windowsを提供し、Surface Laptopのみに搭載することで大量導入を目論んでいるのです。
もうひとつはビジネス市場。
Surface Pro 4でそれなりのシェアは奪えましたが、2-in-1は一般化し他社からも多くの魅力的な機種が発売されておりSurface Pro 4の優位性は揺らいでいます。そのような状況でSurface Pro 5を投入しても意味がありません。
iPadが殆ど売れなくなりNexus 9の後継も出ずWindows 8も失敗に終わり、iOS、Android、Windowsすべてのプラットフォームでタブレットという市場が消えようとしています。
このことからハッキリしているのはキーボードは必須ということです。
では、キーボードの在り方は2-in-1なのかクラムシェルなのか、それを見極めるために市場に投入されるのがSurface Laptopです。
教育機関向けだけならWindows 10 Educationのように教育機関だけに売ればよいのに、Surface Laptopは一般売りもされることからもその意図が感じられます。
Surface LaptopとSurface Pro 4の性能比較
ビジネスパソコンと見た場合に問題となるスペックについて見てみます。
学生向けとされたSurface Pro 4のCore m3モデルはここでは除外します。
また、Surface Pro 4は現在日本で販売されている形態ですが、Surface Laptopは米国、カナダ仕様なため日本で販売される場合はソフト的な仕様は変わります。
Surface Laptop | Surfce Pro 4 | |
---|---|---|
CPU | Kaby Lake Core i5,i7 |
Skylake Core i5,i7 |
GPU | Intel HD 620 Intel Iris Plus 640 |
Intel HD 520 Intel Iris |
メモリー | 4,8,16GB | 4,8,16GB |
SSD | 128,256,512GB | 128,256,512GB,1TB |
ディスプレイ | 13.5インチ 2256 x 1504 (201PPI) 10点マルチタッチ |
12.3インチ 2736 x 1824 (267PPI) 10点マルチタッチ |
ソフトウェア | Windows 10 S (Windows 10 Pro) |
Windows 10 Pro (x64) |
Office | Office 365 Personal (1年) |
Office Premium Home & Business |
無線機能 | IEEE802.11a/b/g/n/ac Bluetooth 4.0 LE |
IEEE802.11a/b/g/n/ac Bluetooth 4.0 LE |
セキュリティ | TPM Windows Hello顔認証 |
TPM Windows Hello顔認証 |
カメラ | 顔認証カメラ フロントカメラ |
顔認証カメラ フロント 5.0MP リア 8.0MP |
センサー | 光センサー | 光センサー 加速度計 ジャイロスコープ |
外部端子 | USB 3.0 Mini DisplayPort ヘッドホンジャック Surface Connect |
USB 3.0 MicroSD Mini DisplayPort ヘッドホンジャック Surface Connect |
バッテリー 駆動時間 |
14.5時間 | 9時間 |
本体色 | Bugundy Platinum Cobalt Blue Graphite Gold |
Platinum |
寸法 | 308.1x223.27 x14.48mm |
292.1x201.4 x8.4mm |
重量 | 1,252g | 786g |
同梱物 | 本体 電源アダプター 説明書 |
本体 Surfaceペン 電源アダプター 説明書 |
オプション | Surfaceペン Surfaceダイヤル |
タイプカバー(310g) |
参考価格 | $999(109,890円) ($1=110円換算) Core i5 128GB SSD 4GB RAM |
128,200円 Core i5 128GB SSD 4GB RAM +タイプカバー |
こうして見るとタブレット的な要素は省かれていますが、ビジネスマシンとして十分使えるスペックです。
画面解像度は落ちていますが13.5インチと大きくなった分、見易いでしょう。
重くなったように見えますがタイプカバーを加えると、わずか156gの増加です。
何と言っても膝の上に載せて普通に作業できるのがSurface Pro 4との大きな違いです。
Surface Pro 4はキックスタンドで支えるため膝の上では安定させ難いですし、Surface Bookは重心が画面側にあるため、ある角度以上開くと画面側に倒れてしまいます。
日本向けの新Surface
5月23日にMicrosoft本社から、5月26日に日本マイクロソフトからSurfaceシリーズの新製品の発表があるとのことです。
- Microsoft、Surface関連イベントを5月23日に上海で開催(ITmedia)
- 日本マイクロソフト、5月26日に新Surface発表へ(PC Watch)
日本で発売していないSurface StudioやSurface Laptopまたは別の製品の発表があるのかもしれません。
日本ではサブスクリプション版のOffice 365 Soloを付けてもパソコンは売れませんので変更はあるでしょう。できればWindows 10もWindows 10 Sではなく最初からWindows 10 Proでビジネス向けとして販売してもらいたいところです。
まとめ
Surface Laptopは教育関係だけに向けた製品ではありません。
Windows 10 Proへの無償アップグレードを使うことでビジネスマンに向けても販売されているのです。
そしてSurface LaptopとSurface Pro 4の売れ方次第では、2-in-1はSurface Pro 4が最後の機種になる可能性もあります。
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