楽天モバイルを利用するメリットのひとつに、国内通話がかけ放題となるRakuten Linkの存在があります。
ところが、このRakuten Linkにはいろいろと問題があり、現時点では電話番号の前に特番を付けて発信すると、国際通話になる場合があるようです。
概要
親がRakuten Linkから「186」が付いた連絡先に電話をかけたのに国際通話になってしまったので、問合せしていたのですが、最終的に改善に向け改修を行うとのことで返金されることになりました。
ただし、改修が完了するまで「186」を付けての発信や、連絡先に「186」を付けないように要請されました。
ところが楽天モバイルのサポートはサポート業務請負企業に丸投げされており、楽天モバイルには一切報告が上がっていない可能性がコメントで指摘されました。
しかし楽天モバイルは社内にサポート部門を持っており、2月から子会社化することが発表されています。
発信者番号通知
問題となる通話は「186」を付けている場合に発生するようです。この「186」とは発信者番号を通知するために必要な番号です。まず、そのサービスについて説明します。
電話をかけた相手に発信者番号を通知するサービスは、1997年に「ナンバー・ディスプレイ」としてNTT東西がはじめましたが、その後、NTT以外の電話サービスや携帯電話でも開始されました。「ナンバー・ディスプレイ」はNTT東西の登録商標のためサービスを提供する企業により名称は異なります。
発信者番号通知には、電話番号の前に付けることで発信者番号を通知するかどうかをコントロールできる特番があります。
日本では、通知に「186」、非通知に「184」が使われており、この番号は国によって違います。
「186」「184」は通知/非通知の処理が行われた後、通知される発信者番号から削除されるため、iPhoneで「186」を付けた電話番号を連絡先に登録している場合、その人からの着信でも名前を表示できません。
楽天モバイルでも発信者番号通知は提供されており、「186」、「184」も対応しています。
ただし、Rakuten Linkアプリからの通話でも対応するのかどうかは明言されていません。
Rakuten Linkの仕様
Rakuten Linkについて調べて、いろいろ分かったことがあります。
Rakuten Linkの使い方についてはこちらに説明があります。
Rakuten Linkの仕様についてはこちらに記されています。
この中の「注意事項」に以下のような記述があります。
自動バックアップについて
以下のデータは、暗号化したうえで自動バックアップします。
- 連絡先
- 通話
- メッセージ履歴
- 送受信したメッセージ
- 送受信した写真・動画を含むファイル
電話帳について
Rakuten Linkは、ご利用のスマートフォン内にある電話帳とデータを同期しクラウド上に暗号化し安全に保管します。これにより機種変更された場合でも、電話帳のデータ移行が不要となります。
ここで重要な点は、
- 連絡先が自動でクラウドにバックアップされている
- バックアップデータは暗号化されている
という2点で後の説明に関係しますので覚えておいてください。
Rakuten Linkでのクラウドバックアップの動作
クラウドにバックアップされているなら端末の連絡先へのアクセスを禁止しても、Rakutenn Linkの連絡先は復元されるはずなので試してみました。ここでの端末はiPhoneです。
iPhoneの連絡先とRakuten Linkの連絡先のすべてのエントリーの電話番号に「+」は付いていません。「186」が付いた電話番号も含まれています。
まず、Rakuten Linkの連絡先を削除せずにRakuten Linkからログアウトして、Rakuten Linkを削除しました。
次に、Rakuten Linkを再インストールして楽天アカウントでログインし、電話番号の認証を行いました。「Linkが連絡先へのアクセスを求めています」には「許可しない」を選択します。
するとRakuten Linkの連絡先は復元されました。
復元された連絡先の各エントリーの名前部分は「黒色」ではなく「灰色」で表示されます。
ひとつのエントリーの詳細を見てみると「186」を付けていた番号に「+」が付いています。(端末の連絡先へのアクセスを禁止しているため登録状況を確認できないので「この番号は端末の連絡先に登録されていません」と表示されています)
この状態で「編集」画面を表示させると「0」で始まる番号にも「+81」が付いていることが分かります。
ここでiPhoneの連絡先へのアクセスを許可して、Rakuten Linkを一度閉じて再起動させるとRakuten LinkがiPhoneの連絡先を読み込みます。iPhoneの連絡先を読み込むとRakuten Linkの連絡先の名前部分が「黒色」で表示されます。
先ほどと同じエントリーを見てみると「+186」が「186」に変わっています。
そして編集画面を表示させると、こちらも「+186」から「186」に変わっています。
(端末の連絡先を読み込ませる前に一度でも編集画面を表示させたエントリーでは、「+186」が「186」に変わることはありません)
Rakuten Linkと通話の動作(推測)
上記のクラウドバックアップの動作から、Rakuten Linkの動作を以下のように推測できます。
- すべての電話番号は「+」と「国番号」を付けた状態でクラウドと端末に保存する
- 「0」で始まる電話番号は日本国内番号と識別し、「0」を取って「+81」を付けて保存する
- 「0」以外で始まる電話番号は「国番号」付きの番号と識別し、そのまま「+」を付けて保存する
- Rakuten Linkの連絡先画面に表示する場合は、保存された電話番号から「+」を取り、「81」は「0」に置き換えて表示する
そしてiPhoneの連絡先を読み込ませると、
- 「0」で始まる電話番号は「+81」に置き換えてiPhoneのエントリーおよび電話番号とRakuten Linkのエントリーおよび電話番号を紐づける
- 「0」以外で始まる電話番号で、番号部分が完全に一致するものはiPhoneの電話番号に置き換えて紐づける
- Rakuten Linkのエントリーは一度でも編集するとiPhoneのエントリーとの紐づけが切れ、iPhoneのエントリーが変更されてもRakuten Linkのエントリーには反映されない
このように考えると「186」を付けると国際通話になってしまう理由は次のように推測できます。
通常動作はこのように推測できます。
- Rakuten Linkはすべての通話を国際通話として「+」と「国番号」と電話番号の組み合わせで発信する
- 基地局側は発信者番号通知の仕組みが機能しており、「+186」、「+184」で始まる番号は発信者番号通知制御と識別して「186」「184」を発信者番号から削除する
- 「186」「184」を削除して「+0」で始まる番号となった電話番号は「0」で始まる番号のため「+」を無視して国内通話として処理する
ところが何かしらの障害で「186」と「184」を発信者番号通知制御と識別しない場合、「+186」、「+184」が付いたままの電話番号として処理されるため国際通話になったと思われます。
遠隔操作による改変はなかったとは言い切れない理由
ここまでで説明してきたようにRakuten Linkは、すべての電話番号に「+」を付けて管理していると思われます。
それならば、前回の記事で指摘したように、楽天モバイルの担当者が意図的に書き換えたのではないと思われるかもしれません。
しかし、「+」が付いた番号がRakuten Linkの画面に表示されるのは特殊な状況の場合だけです。今回実験した結果では、クラウドからバックアップを復元し、かつ、iPhoneの連絡先との紐づけが切れている場合です。
ところが、問題が発生した時に端末の連絡先は変更していないので、クラウドからの復元が行われることや、端末の連絡先との紐づけが切れることはありません。
また、2回目の書き換えでは、エントリーの追加、エントリーへの電話番号の追加が発生しています。しかし、クラウドに保存されたバックアップは暗号化されているはずなので、意図的に復号しなければ編集できないのです。
したがって、暗号化されていない端末の連絡先を遠隔操作で書き換えたか、クラウドのバックアップを復号してから編集して再度暗号化して、強制的にiPhoneにバックアップを復元させたことになります。
したがって、人の手が介入しているのは間違いないでしょう。
前回の記事の反応
親がRakuten Linkから普通に電話をかけたのに国際通話になってしまったという記事に対して、twitterを見てみました。
楽天モバイルを擁護される方も居られますが、注意すべき点は親と同じように被害に遭遇されている方も居られることです。
被害に遭われた方からもコメントを頂いております。
186で国際電話になるケースは前にちらほら見かけてたから作り話とは思えないなあ…。
Rakuten Linkでの意図しない国際通話に注意、責任をなすり付けるために楽天モバイルが連絡先を改変するケースも | Solomonレビュー[redémarrage] https://t.co/7lV1aFZZfR
— かーしろ (@ni10ri) January 21, 2022
2年前に在宅ワークでSkypeの電話会議で通話代が会社持ちになるフリーコレクトに掛けたら通話代2万5千円が「タイへの国際電話」と見なされ請求し何十回問い合わせてキャプチャ送っても無視、最終的に消費者センターに言った翌日に返金案内が来るのが楽天モバイルhttps://t.co/3YPA4OicyE
— 製品通信ネタ (@IT_NETWORUK) January 22, 2022
サポートの回答
親は、楽天モバイルのサポートとチャットでやり取りをして、最終的に国際通話となった料金については返金してもらえることになりました。
そのときに、発信する場合は「186」を付けないで、連絡先の「186」も外すように指示されたそうです。
何故かと問い合わせると改善に向けて改修を行っているため、改修が終わるまでは「186」は使わないようにとのことだそうです。改修の終了はRakuten Linkのアップデートで確認できるとも回答があったそうです。
ただここで疑問が生じました。コメントで頂いた話では、サポート請負企業ではクライアント(今回のケースでは楽天モバイル)には一切報告を上げず、サポート請負企業と顧客との間だけで問題を終息させるのが仕事とのことです。
そう考えると、上記のサポートの回答もサポート請負企業が考えた「嘘」である可能性がでてきます。
しかし、今回の問題に関してはサポートから楽天モバイルに報告は上がっていると考えられます。
理由はサポートに問い合わせた後、Rakuten Linkの連絡先に「+」が付けられたり改変されたりしているためです。サポート請負企業はクライアントとは独立して複数のクライアントからサポート業務を請け負っています。そのような企業が楽天モバイルのシステムに介入して連絡先を書き換えるなど行えるはずがないからです。
そして、楽天モバイルのサポート体制については、2022年2月1日から楽天モバイルカスタマーサービス株式会社に承継されるとあり、現状は楽天モバイル仙台コミュニケーションセンターで担当しているそうです。
したがって、サポートの回答を鵜吞みすることはできませんが、Rakuten Linkの動作検証から推測した問題の発生理由と絡めて考えると、以下のことは言えると思われます。
- 楽天モバイルは「186」(を含む「0」以外で始まる特番)を付けて発信すると国際通話となる場合があると認識した
- 基地局側かRakuten Linkアプリ側かは不明だが、改修を行っている
なお、この問題は公式には明言されないと思われます。それは、この問題に遭遇した方は私の親以外にも居られますが、過去の対応がまちまちだったため、それが問題となる可能性があるためです。
今、すべきこと
いつ改修が終わるか分かりませんが、現時点では「186」を付けるなと明言されたので、Rakuten Linkで「186」などの特番を付けて発信するのはやめた方がよいでしょう。
まず、連絡先の電話番号に「186」を付けている場合はすべて「186」を削除します。「186」以外でも「0」以外で始まる特番を付けている場合も同様に削除してください。
iPhoneの連絡先をRakuten Linkに読み込ませている場合は、iPhoneの連絡先で「186」などの特番を削除します。iPhoneの連絡先とRakuten Linkの連絡先を別々に管理している場合はRakuten Linkの連絡先だけ「186」などの特番を削除します。
次に既定の発信者番号通知を設定します。
「186」が使えないと連絡先ごとに発信者番号通知をするかしないかを選べませんので、一律に発信者番号を通知するかしないかを既定で設定することになります。
iPhoneの場合は「設定」アプリを起動して「モバイル通信」をタップします。
「通信事業者サービス」をタップします。
どちらか既定にする方をタップすると設定する方の番号で発信されます。
(注意)
「発信者番号非通知オフ 148」をタップして既定で発信者番号を通知するようにしておいても、「モバイルデータ通信」が「オフ」の状態で発信すると非通知になりますので注意してください。
まとめ
親の問題の場合は最終的に決着がつきましたが、Rakuten UN-LIMITが始まってすぐに契約した私も契約直後に体験していますので、Rakuten UN-LIMIT開始直後から放置されている問題と思われます。
改修するとは言っていますが、いつ完了するか分からないとも言っていたそうです。
ともかく「Rakuten Linkでは発信者番号通知制御などの特番は使えない」と認識しておくべきでしょう。
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