Windows 10ではクリーンインストールまたはアップデートに使えるメディアを自分で作成できるようになりました。
ただし、そのまま使うと制限があったり、今後のアップデートで問題となる場合があります。
ここでは基本的なメディアの作成方法と制限を無くすためのカスタマイズについて説明します。
Windows 10のインストールメディア
従来、Windowsのインストールメディアはパッケージ版やDSP版などを購入することで入手できましたが、Windows 10からは無償アップグレードなどがあり、誰でもインストールメディアを作成できるようになりました。
作成できるメディアの種類はUSBメディアとISOファイルです。ISOファイルはDVDに書き込むか、マウントしてアップグレードメディアとしても使えます。
DSP版にはDVDが付きますが、パッケージ版はUSBメディアが付いています。ライセンスだけを購入した場合はISOファイルをダウンロードすることになります。
注意点は、入手経路により付いてくるDVD、USBメディア、ISOファイルの内容が異なり、電話によるライセンス認証が制限される場合があります。
Windows 10の入手
パソコンにWindows 10をインストールする方法としては大別してオンラインアップデートとクリーンインストールがあります。
まず、Microsoftのこちらのサイトにアクセスします。
- Windows 10のダウンロード(Microsoft)
このサイトの「今すぐアップデート」をクリックすると「アップグレードアシスタント」というアプリがインストールされます。
このアプリは随時更新されており最新版がリリースされていると自らを自動で更新します。そして名前が示す通り「アップグレードアシスタント」はWindows 7/8.1からWindows 10へのアップグレードとWindows 10の旧バージョンから最新バージョンへのアップデートが行えます。
「アップグレードアシスタント」を使う場合は必ずオンラインである必要があります。
一方、「ツールを今すぐダウンロード」をクリックするとWindows 10の最新バージョンのインストールメディアを作成できる「メディア作成ツール」をダウンロードできます。
「メディア作成ツール」はWindows 10の各バージョンに対応するものが存在し、バージョン1703以降のものは最新バージョンがリリースされると使えなくなります。
なお、Windowsパソコン以外から上記サイトにアクセスした場合は、最新バージョンのISOファイルがダウンロードできる「Windows 10のディスクイメージ(ISOファイル)のダウンロード」が表示されます。
このサイトからダウンロードできるISOファイルのダウンロードリンクは24時間の有効期限があるため、ダウンロードリンクを記録しておいても意味がありません。
メディア作成ツールによるメディアの作成
まず、「メディア作成ツール」をダウンロードします。
Windowsパソコンから、こちらにアクセスして「ツールを今すぐダウンロード」をクリックしてダウンロードします。
- Windows 10のダウンロード(Microsoft)
ファイル名は、対応するバージョンに関係無く常に「MediaCreationTool.exe」となります。
「メディア作成ツール」実行時の選択でオンラインアップデートも行えますが、ここではメディアの作成についてのみ説明します。
作成できるUSBメディアまたはISOファイルは、32ビット版/64ビット版/両方の3種類となります。
1回の実行で作成できるメディアはUSBメディアが1個またはISOファイルが1個となります。複数のメディアを作成する場合は、その都度ダウンロードし直しますのでそれなりの時間がかかります。
実行環境は、Windows 7/8/8.1/10がインストールされたWindowsパソコンのみです。Windows Server 2008/2012/2016でも実行可能と思われます。
必要なファイルは「ライセンス条項」も含めてすべてダウンロードされるのでネットワークに接続されていることが必須となります。
USBメディアはメディアの作成段階でフォーマットされるので、消されてもよいようにしておいてください。
実行にあたりSSDまたはHDDに次の空き容量が必要となります。ISOファイルの場合は作成するファイルの3倍の空き容量が必要となりますので注意してください。
USBメディア | ISOファイル | |||
---|---|---|---|---|
32/64bit | 両方 | 32/64bit | 両方 | |
Cドライブ 空き容量 |
8GB | 16GB | 8GB | 16GB |
保存先 空き容量 |
- | - | 4GB | 8GB |
メディア 容量 |
4GB | 8GB | - | - |
UEFIブートができるパソコンでメディアとして保存する場合は、ISOファイルを作っておけば十分です。必要な時にFAT32でフォーマットしたUSBメモリーにコピーすれば、インストールメディアとして使えます。
UEFIブートが行えない古いパソコンでは、レガシーブートができるUSBメモリーが必要なため、ここで作成するUSBメモリーの内容でなく、USBメモリー自体を保存しておく必要があります。
共通手順
ネットワークに接続されていることを確認してから、ダウンロードした「MediaCreationTool.exe」を実行します。
「ユーザーアカウント制御」が表示されるので「はい」をクリックして進めます。
必要なファイルのダウンロードが完了するまで待ちます。
「適用される通知とライセンス条項」が表示されますので同意する場合は「同意する」をクリックして進めます。
準備が整うのを待ちます。
ここではメディアを作成しますので「別のPCのインストールメディアを作成する(USBフラッシュドライブ、DVDまたはISOファイル)」を選択して「次へ」をクリックします。
言語、エディション、アーキテクチャの選択画面となります。
選択できるようにするために「このPCにおすすめのオプションを使う」のチェックを外します。
選択できるエディションは言語により変わりますが、ここでは「日本語」とします。
日本語で選択できる「エディション」は「Windows 10」のみです。
実際にインストール段階で選択できるエディションはバージョンによって異なり、Windows 10 バージョン1607では「Pro、Home、Education」が、
Windows 10 バージョン1703では「Pro、Home、Education」が、
Windows 10 バージョン1709では「S、Home、Education、Pro」が選択できます。
Windows 10 バージョン1709では「Windows 10 S」のインストールメディアが作成できますので、Surface Laptopのアップデートに使用できるUSBメディアを作成することができます。
アーキテクチャは「32ビット(x86)」、「64ビット(x64)」、「両方」から選択します。
「両方」を選択した場合、32ビット版、64ビット版どちらのWindows 10でもクリーンインストールやアップデートが行えるメディアを作成できます。
32ビット版と64ビット版のWindows 10パソコンを持っている場合は「両方」で作っておいた方がよいでしょう。
ここでは「アーキテクチャ」は「両方」を選択したとして「次へ」をクリックして進めます。
注意を即すダイアログが表示されます。
Windows 10ではライセンス認証を後回しにすることでプロダクトキーが無くともインストールすることができます。
ただし、インストール後にライセンス認証を行わないと利用が制限されますので、対応するライセンスを入手しているか、アップグレードなどでライセンス認証が既に完了していることが必要となります。
特殊な例としてIoT用途で利用制限がかかった状態で使う場合もあるようです。
作成するタイプの選択となります。
以下、メディアごとに説明します。
USBメディアの作成
USBメディアを作成する場合はUSBメディアをUSBポートに接続してから「USBフラッシュドライブ」を選択して「次へ」をクリックします。
認識しているUSBメディアのドライブ文字とラベルが表示されます。
認識していない、または、別のUSBメディアに差し替えた場合は「ドライブの一覧を更新する」をクリックして表示を更新します。
正しいUSBメディアを認識したら「次へ」をクリックします。
インストールパッケージをダウンロードし、
パッケージを検証し、
パッケージの展開とUSBメディアへの書き込みを行います。
USBメディアの作成が完了したので「完了」をクリックして終了します。
ダウンロードしたパッケージと展開したファイルは削除されます。
「C:\ESD」というフォルダーが残っている場合は削除して構いません。
別のUSBメディアまたはISOファイルを作成する場合は最初から繰り返します。
ISOファイルの作成
ISOファイルを作成する場合は「ISOファイル」を選択して「次へ」をクリックします。
ISOファイルのファイル名と保存先を指定します。
保存先はデフォルトで「ダウンロード」となります。Cドライブとなりますので空き容量には注意してください。
ファイル名はデフォルトで「Windows.iso」となります。複数のアーキテクチャのISOファイルを作成する場合は上書きしないようにファイル名を変更してください。
保存先とファイル名を指定したら「保存」をクリックします。
インストールパッケージをダウンロードし、
パッケージを検証し、
パッケージの展開とISOファイルへの書き込みを行います。
ISOファイルの作成が完了します。
ISOファイルは左上に表示された場所に保存されています。
メディア作成ツールにはDVDへの書き込み機能は無いため、書き込みはWindows 10の機能で行います。
完了したので「完了」をクリックして終了します。
ダウンロードしたパッケージと展開したファイルは削除されます。
「C:\ESD」というフォルダーが残っている場合は削除して構いません。
別のUSBメディアまたはISOファイルを作成する場合は最初から繰り返します。
作成したメディアの使用方法
作成したメディアはクリーンインストールにもアップデートにも使えます。
アップデートに使う場合
アップデートに使う場合は、こちらの記事を参照願います。
Windows 10 バージョン1709のものですが、Windows 10 バージョン1803でもほぼ同じ手順でアップデートできます。
クリーンインストールに使う場合
クリーンインストールを行うには、作成したUSBメディアまたはISOファイルを書き込んだDVDでパソコンを立ち上げます。
キーボードが付いているパソコンでは起動時に[F7]などのファンクションキーを押して起動メニューを表示させてメディアを指定して起動します。通常は「UEFI:」と付いたものから起動します。
タブレットなどキーボードの無いパソコンでは[ボリュームダウン]を押しながら起動することでメディアから起動できるものが多いようです。
メディアから起動させる方法はパソコンによって異なりますのでパソコンの説明書で確認してください。
この画面が表示されている間にどれでもよいのでキーボードのキーを押します。
「32ビット(x86)」または「64ビット(x64)」で作成したメディアはすぐにインストーラーが立ち上がります。
「両方」で作成したメディアではこの画面が表示されます。
「Windows 10 Setup(64-bit)」または「Windows 10 Setup(32-bit)」を[↑]、[↓]で選択して[Enter]を押すことで選択したインストーラーが立ち上がります。
カスタマイズ
カスタマイズはファイルを追加する必要があるため通常はISOファイルでは行えません。
ISOファイルでカスタマイズを行うにはISOファイルの編集ツールが必要になります。
または後述の作業フォルダーにメディア作成中にファイルを追加することでISOファイルに追加できる可能性もあります。
ここでは書き込みが可能なUSBメディアで行います。
カスタマイズは次の2点について行います。
- クリーンインストール時のエディション選択
- クリーンインストール時のパーティション配置と回復パーティションサイズ
詳細は各項目で説明します。
クリーンインストール時のエディション選択
Windows 8以降の大手メーカー製パソコンにはプロダクトキーというものが付属していません。
しかしライセンス認証は完了します。
理由はBIOSにパソコン毎に違うプロダクトキーが書き込まれているためです。
Windows 10 バージョン1511以降ではクリーンインストール時にこのBIOSに書き込まれたプロダクトキーを読み込むことで、そのパソコンにライセンスされているエディションを自動的に選択してインストールを進めてしまいます。
そのため、Windows 10 HomeがインストールされたパソコンにWindows 10 ProをインストールするにはWindows 10 HomeをインストールしてからWindows 10 Proにアップグレードする必要があります。
エディションの変更は再インストールほどの変更はありませんが、できれば最初からWindows 10 Proをインストールしたいでしょう。
そのためにはBIOSからプロダクトキーを読み込まないように指示するファイルを追加します。
こちらのファイルをダウンロードして展開すると「エディション選択」フォルダーに「EI.cfg」があります。
Windows 10をクリーンインストールする場合に使用するファイルのパッケージです。
内容は、このようなものです。
[EditionID] |
このファイルを作成したアーキテクチャ別にコピーします。
USBメディアのドライブ名が「D:」の場合は、
- 32ビット(x86):D:\sources
- 64ビット(x64):D:\sources
- 両方:D:\x86\sources 及び D:\x64\sources
となります。「両方」では2か所にコピーします。
詳細についてはWindows 10 Proをインストールする方法を参照願います。
クリーンインストール時のパーティション配置と回復パーティションサイズ
クリーンインストールを行う場合、パーティション構成をインストーラーに任せるとこのような配置でインストールされます。
回復 | システム | 予約 | Windows |
パーティション構成は一度決めてしまうと変更は容易ではありません。
この状態でWindows 10の大型アップデートを行うと先頭にある回復パーティションでは容量が不足してこのような構成に変更されてしまう場合があります。
回復 | システム | 予約 | Windows | 回復 |
いわゆる「回復パーティションの増殖」という問題です。
しかしMicrosoftが推奨するパーティション配置はこのようなものです。
システム | 予約 | Windows | 回復 |
このパーティション配置では回復パーティションが不足しても増やすことは容易です。
しかし、このパーティション配置はインストーラーでパーティションサイズを指定して個別に確保する方法では作成できません。
そのためこの構成にする処理をスクリプトとして用意してクリーンインストール前に実行することで、推奨されるパーティション構成でクリーンインストールすることが可能となります。
また「回復パーティションの増殖」は回復パーティションの容量不足が原因のため、予め大きな容量としておくことで回避することができます。
詳しくは、こちらの記事を参照願います。
メディア作成ツールの動作詳細
メディア作成ツールを起動すると、
- C:\$Windows.~WS\Sources
に必要なファイルがダウンロードされます。
EULAが表示された段階で上記フォルダーを確認すると「products.xml」というファイルがあり、このファイルに各言語のインストールパッケージのダウンロード先が記されています。パッケージはESDファイルです。
メディアの作成が始まると、
- C:\ESD\Download
に仮のファイルが作られます。このファイルは入れ物として最初に必要な容量が確保され、ダウンロードされたデータは逐次このファイルに書き込まれます。
ダウンロードが完了すると仮のファイル名から正式なファイル名に変更されます。
- installx64.esd (3,135,693,958 バイト)
- installx86.esd (2,432,282,006 バイト)
サイズはWindows 10 バージョン1709のパッケージの場合です。
そして、USBメディアまたはISOファイルの直下に見える形で
- C:\$Windows.~WS\Sources\Windows
の下に展開されます。
展開が終わるとUSBメディアまたはISOファイルに書き込まれます。
インストールパッケージと展開したファイルの保存に必要なため、作成するメディアサイズの2倍のワークエリアを必要とします。
最後のクリーンアップでこれらのファイルは削除されるため、再度実行する場合はダウンロードからやり直すこととなります。
なお、「C:\ESD」フォルダーは消されず残る場合があります。
まとめ
Windows 10のインストールメディアの作成方法はバージョンが進んでも変わっていません。
実際に作成されるインストールメディアはコンシューマ用途で入手可能なエディションが増えているため対応するエディションも増えています。
インストールされるWindows 10の構造も大きく変わりませんが、少し手を加えることでより使いやすい環境でインストールすることが可能となります。
クリーンインストールする目的は安定した環境を手に入れることです。そのためにも不安要素はできるだけ取り除いておきたいものです。
コメント
Cドライブを分割してDドライブを作っています。
これを実行するとDが消えてCだけに成ってしまうのか?
Cだけが更新されるのか?
その辺の所を教えてください。
Dをそのまま残してCだけをUpdateすることは可能なのでしょうか?
コメントを頂きありがとうございます。
USBメディアまたはISOファイルを作成して、それらのメディアを用いて最新のWindows 10にアップデートすることは可能です。
その場合、アップデートされるのはCドライブだけで、Dドライブ以降のドライブは変更されません。
これは単一ドライブをパーティション分割している場合も、複数のドライブを接続している場合も同様です。
ただし、大型アップデートは内部的にはクリーンインストールと同じなので、立ち上がらなくなるなどの不具合が起きる場合もあります。
そのため、重要なデータは、アップデート前にバックアップしておくことをお勧めします。
>ただし、大型アップデートは内部的にはクリーンインストールと同じなので、立ち上がらなくなるなどの不具合が起きる場合もあります。
立ち上がらなく成った時の復旧方法をご存じでしたら教えてくれませんか?
Cドライブは外付けのHDDに保存して有ります。
Freezしてしまった時のことが心配なんです。
富士通のLIFEBOOK AH53/B2のWindows10を使っています。
コメントを頂きありがとうございます。
正直なところ、症状によって対処方法が異なるので、起きてからでないと分かりません。
万が一のためには、C:ドライブを含むSSD/HDD全体をイメージバックアップしておき、事が起きたら復旧することです。
イメージバックアップツールは、Todo BackupなどFreeのもので問題ありません。
実際のところ、アップデートでフリーズすることはよくあります。その場合は電源を落として再起動することで、アップデートを再開するか、以前のバージョンに戻すか、どちらかに処理が進みます。
どちらにも進まない場合は、ブート修復を行い、それでもダメならバックアップから復旧します。
https://solomon-review.net/uefi-hdd-boot-recovery-1/
https://solomon-review.net/uefi-hdd-boot-recovery-2/
大抵の場合は、失敗すると元のバージョンに戻されます。
丁寧な解説ありがとうございました。
あと一つ教えてください。
作業時間はどのくらい掛かるもんでしょうか?
コメントを頂きありがとうございます。
USBメディアからアップデートする場合はダウンロードする時間がかかりませんので、パソコンの性能次第となります。
Core i7 7700HQなら1時間以内には終わるでしょう。
ありがとうございました。
コメントを頂きありがとうございます。
アップデートの参考になれば幸いです。